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COMPANYKISHII’S COLUMN

KISHII’s COLUMN岸井コラム

ロマン

嬬恋で雪の中、
24歳のMTB(マウンテンバイク競技)のプロを目指している若者と会った。
まだ3社のスポンサーになんとかついてもらって、
年間で60万年程度のサポートでは足りないために、
インストラクター等のアルバイトで働いている。
今のスポンサーへのお返しのためにも、
世界大会で勝つことが目標だという。
ロードバイクでさえ、日本人のプロはまだ数名しかいない世界。
ましてや、MTBはほとんどいない。
自転車大国のヨーロッパでは、自転車のプロ選手はごまんといる。
日本人でプロアスリートを目指している、まだ無名な彼を応援したいと思った。

以前にF1を目指している、若いレーサーを支援したことがあった。

スポンサーになるということ。
スポンサーになってもらうということ。
純粋な、なにかロマンがある。
ロマンとは情緒的、感情的な物語。
思いや理想を現実にするストーリー。
挑戦、冒険、困難、失望、挫折、達成、成功、失敗、
信頼、仲間、戦い、葛藤、喜び、
みらいへの妄想、期待。
不確定な未知への道のりにあるワクワク、
世界チャンピオンになるとか、
分かりやすい夢もった若者へスポンサードは
あなたの夢に賭けたい、純粋な気持ち。
それが、お金という形。
企業ならば、当然、そこに合理性が求められる。
費用対効果、どれだけテレビに映るかとか。
メディアに載ることで、自社を知ってもらい
売上に結びつけることになるのだけれど、
スポンサードの始まりは、合理性なんかではない。

売れてない選手を支援して、
その産業じたいを伸ばしたい意味だったり、
支払ったお金が循環して、どう戻ってくるかは分からない。
だからこそ、ロマンなのだ。
世の多くの会社は世界チャンピオンになるとか、
そんな大それたビジョンがあるわけではない。
でも、小さければ小さいなりのロマンを持ってみんな始めている。
自社のロマンと、その若者のロマンを重ね合わせて、
の支援をするのだ。

事業の立ち上げは、だいたいが合理性というより
強い思いであったり、やむにやまれぬ動機や、自我や夢が、
混ざり合ったロマンみたいなところに人を吸い寄せ、
うねりになって成長してゆく。 あるいはポシャる。

組織の成り立ちのほとんども、
そうしたプリミティブなところから始まる。
俺に力を貸してくれ、あなたの力が必要なんだ、
みたいなとこが、組織の始まりだ。

段々と、成長するにつれ合理的、効率的に進化して
役割や責任の分担が進んでゆく。
そうやって、時間が経つうちにセクショナリズムが進み、
しだいに役人的、官僚的な
血のかよってない組織へと向かっていく。
永く続く企業の多くは、創業のロマンだとか、
血のかよった創業理念だとかが、ちゃんと息づいていたりする
前年対比だとか、生産性だとか
費用対効果や成果ばかり目を奪われ根っこが忘られやすい。
木は上に伸びれば伸びるほど、
横に枝葉を広げれば広がるほど、
地中深く根っこを張らなければ、いずれ倒れてしまうからだ。