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KISHII’s COLUMN岸井コラム

エピローグ

2015年、初めて砂漠250kmマラソン7日間レース(サハラ)に出た時にのことです。
大会のひと月前に膝の痛みで、全く走れなくなりました。
歩くことは出来ても、走れない。

制限時間に引っかかれば、途中で足切りされる可能性もある。
走ることは諦めて、歩くしかない。
痛み止めのロキソニン錠剤をたっぷり持って、
それと医者にもらったロキソニンテープでなんとかなるだろう。
装備や食料はグラム単位で重さを計って、軽くした。
それでも、11kgを超える重量となった
サハラ砂漠の砂は、とても粒子が細かく、シューズの中に容赦なく入ってくる。
用意したシューズカバーは壊れ、足の指10本のうち半分くらいマメが出来た。
マメは溜まった水を針で刺して抜き、
その上にテーピングをすればなんとか歩けるとわかった。
でもいちいち針で水抜きする余裕はない。

あとで見ると足の指の爪がプカプカと浮いていた。

フカフカの砂の上を一日中歩けば、足だけでなく、背中、腰、肩、そこらじゅうが痛い。
前に進むことにトラブルや困難はつきものだ。
すべて事前に準備できるものでもなく、
身をもって体験してわかることばかり。
背中のザックに詰めたドライフードは、
暑さと疲労で身体が受けつけなくなった。
粉末のココアや味噌汁がご馳走だった。
同じテントの仲間とは互いの装備を融通しあって、助け合った。

4日目の終わり、「もう、足の痛みが限界、明日は無理、おれリタイアする」。
一度は諦めた。
「今、決める必要ない、明日の朝になって決めたらいい」
仲間になだめられ、サハラはどうにかゴールすることができた。
周りに仲間がいることで、支えられた。
限界は意外と限界ではなかった。
砂漠はじぶんで好きこのんで、行っていてるというのもあるけれど、
チャレンジしようが、しまいと人生に困難は無くならない。

2020年4月6日
コロナウイルスの感染者が、都内で連日100人を超え。
底知れない不安が世の中を覆いつくしていた。
休業要請が出た場合の対応をどうするか、店としての方針を決めておく必要がある。
休むとすればいつまでか、早朝から取締役に緊急招集をかけて集まってもらった。
国から休業要請を受けてから休業に踏み切るか、
それとも緊急事態宣言の前に休業の決定を下すか。

しかし美容業は休業要請指定には入っていない。
休業による売上損失はどれほどになるだろう。
社員の安心と健康を守る会社の責任は?
議論の末、4月8日からの2週間の全店休業を決定した。
「緊急事態宣言を受けて」という表現はしたくなかった。
自主的に感染拡大を防ぐ目的で、社会的立場として、お客様にご協力を願うカタチで告知をした。
政府の緊急事態宣言が出る前に、
美容業は、休業要請指定業種に入ってないのに、
生活に必要な業種と言っているのに休業するなんて、何を考えているのか、との批判もあった。

一方で、美容業界では、
どこよりも早く休業を決断したことに賛同してくださるお客様の声も多く頂いた。
こうした大変な事態は、社員やお客様からの信頼に値するかどうか、
あらためて、問われる機会となった。

辛く、苦しいことは、避けたいのが人情だけれども、
頼ってくれる人がいると身が正される。
頼れる人かがいてくれて、支えられる。
この先に何が待っているだろう。
事業も旅も未来の妄想からはじまる。

あの坂の向こう側にどんな景色が見えるだろう?
想像を膨らませるると、確かめてみたくなる。

先が見通せる平坦な道も良いけれど、
空に消える道や、海に消える道が大好きだ。

「旅は道連れ、世は情け」と古い人は言った。
合理性や効率性だけでは測れない。
順位や結果ばかりでもない。
出会いも別れも、
勝った負けたも、
近道も寄り道も、
みんな旅の一部。

M.SLASHの旅はつづきます。

みなさん、良い旅を続けてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。