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COMPANYKISHII’S COLUMN

KISHII’s COLUMN岸井コラム

挑戦

考えてみると
「わざわざ、そこまでしなくていいのに」ってとこに自分は行きたがってるような気がする

27歳で、お店を始めるときは、3500万円の借り入れをしないとならなかった
父親には反対されて、保証人になってもらえなかった

「最初は、小さくやるものだ、それにお前は家業を継がないのだから自分でなんとかしろ」と言われ、お金を借りるのに本当に苦労した

まぁ、35坪の広さで駅から歩いて20分もかかる場所じゃあね、誰もよい物件とは言ってくれない

毎月の返済を考えたら自分一人でなんとかなるものじゃない
なんで3500万円もかかるんだ?と言われそうだが、当時は保証金が高くて、家賃の10ヶ月分、1500万も払わなきゃならなかった

お金を借りるにしても金利が高くて、5年で返さなきゃならない
家賃と返済を計算すると最低でも7人くらいでやらなきゃ、回らない

誰も働いてくれる人は決まってないし
店の前は、ほとんど人が歩いてない
そんな場所で、そんなに大きなお店がうまくいかないだろうというのが、おおかたの見方だった

当時から、美容師が独立するときは、自分のお客さんを持っていることが前提条件のようになっていた

自分のお客さんはいないし、スタッフもいない
そんな駅から遠い場所で始めるのは常識的でなかった

自己資金があったのか?といえば
ほとんどない
以前からお金を貯めることに意味を感じてなかったから、貯金はほとんどなし、開業するまでの生活費も含めての借金だった 

小さな子供が二人もいて無謀といえば無謀かもしれない
だけど、当時の師匠の影響で
「財産は金じゃない、経験こそが財産だよ」
と言われて、そう信じていた

普通の人は海に潜るのに
2〜3mくらい、10m潜れる人は稀だ
他の人がやらないことが経験だよ と。

だから、資金がないことがデメリットとは思っていなかった
お金は使うもの、お金に使われちゃいけない
そんな師匠の教えも強く影響を受けた

休まず働くのは苦じゃなかった 競争するのがゲームのように
思っていたからだろうと思う

19歳で結婚していたから、24歳で初めての子供が生まれた
子育てや家のことはほとんど関わらないでいられるほど仕事にオールインしていたと言えば聞こえがよいが少なくとも家庭的ではなかった 仕事にオールインさせてくれるような
奥さんだったのも運が良かった

だから、人があまりやらないようなとこまで潜れたんだと思う
そこまで潜った経験が、自分の財産になっていた

普通の人が2〜3mなら、おれは10m潜るよ
普通の人が5km走るなら、おれは30km行くよ
普通2、3店舗なら、おれは10店舗やるよみたいな

常識は常識、人の常識、おれの常識とは違うってところを見せつけたかったのかもしれない

人と競っても仕方ないんだけど
事業をやるってことは、負ければ破産、お金を返せない
誰かに迷惑をかける、だから
勝負している現実と向き合わなくちゃいけない
真剣勝負ではあるけれど、遊びみたいな感覚だった

ゲームとして考えたら、苦しいことでも面白くやれるそんなふうに思っていた
誰しも苦しいことを避けたい
周りを見て普通とされる
常識内でいれば安心、安全みたいなところからすればわざわざ、どうしてそんなに苦しいことするの?って
他人には見えたかもしれない 

どうもみんなストレス、負荷を悪者扱いしてる気がする
でもね、誰しも自分のクセってあるでしょ
考え方のクセ、
姿勢のクセ、
筋肉の使い方のクセ

そのクセが安定に偏ると硬直してしまいやすい
世間の常識を、自分の常識にしてしまうのもクセ

安全、安心は、しなやかさを失ってしまいやすいのが難点だ

ほっときゃ固まってしまうから柔軟性を保つのにストレッチ(ストレス、負荷)の必要があると思う 

標準という言葉の中にあるワナがある、そこなら大丈夫という錯覚がある 
だから、一般的とか普通がどのあたりかを見定めそれを超えてみるところに経験という財産があるように思う

小さければ、大きくなってみる
多くなりすぎたら、少なくしてみる
使ってないところは、使ってみる
強くなりすぎたら、弱くしてみる
固くなりすぎたら、柔らかくしてみる
どうも人間は、一方に偏りやすいようだ

片一方じゃなくて、どっちにも振ってみることで
どこが中心かが探れる 中心がわかるとしなやかさを保てる

苦しいことと面白いことは別々じゃなくて一体だったって気づく

だから、そこまでやる?ってとこまで
やってみたくなるんだね